手術で完全に摘出できれば完治する良性腫瘍と、手術で完全に摘出することが難しく再発もある悪性腫瘍とがあります。

脳腫瘍とは

頭蓋内にできた腫瘍は、たとえそれが脳から発生していなくても、全て脳腫瘍と言います。

脳腫瘍には良性悪性の2種類があり、それぞれの細胞の性質や形によって細かく分類されいます。一般に、脳組織内に発生する腫瘍は悪性である事が多いのに対し、脳組織の外側に発生する腫瘍は良性の場合が多い傾向にあります。脳腫瘍全体では悪性と良性の割合はほぼ同率です。

脳腫瘍のうち頭蓋内の組織である脳・髄膜・下垂体・血管などからできたものを原発性脳腫瘍と言い、脳以外の身体の部分でできた腫瘍(癌)が頭蓋内に転移(飛び火)したものを転移性脳腫瘍と言います。通常、脳腫瘍と言う場合には原発性脳腫瘍を意味します。

原発性脳腫瘍には髄膜腫脳下垂体腫瘍聴神経腫瘍などのように、腫瘍が急激に増殖する事がなく、手術で完全に摘出できれば完治する良性腫瘍と、神経膠芽腫のように腫瘍が急激に増殖して周囲に広がり、正常神経細胞を破壊し、手術で完全に摘出する事が難しく、再発もある悪性腫瘍とがあります。

悪性脳腫瘍は、からだの他の部分にできる「癌」と違って、頭蓋外への転移が非常に少ないのが特徴です。

脳腫瘍は1年間に10万人あたり46人くらい発生します。

症状は

腫瘍が頭蓋内を占拠して内圧が高くなるために発生する@頭蓋内圧亢進症状と、腫瘍ができた脳の部位に応じて現れるA脳局所症状(巣症状)とがあります。これらの症状はゆっくりと進行するのが普通ですが、悪性脳腫瘍の場合には急速に症状が進行するのが特徴です。

頭蓋内圧亢進症状としては、頭痛嘔吐、眼底のうっ血乳頭による視力低下が主な症状です。頭痛は朝に多く、はじめは不定期でも症状が進むにつれて持続的になります。嘔吐も朝方に多く、時には突然噴水のように吐くこともあります。頭蓋内圧が常に高くなると脳ヘルニアがおこり、物が二重に見え、呼吸や意識の障害が現れ生命が危険になります。

脳局所症状(巣症状)は腫瘍の発生した部位や腫瘍によって圧迫された脳の働きが障害されて起こる症状で、手足の麻痺感覚障害言語障害視野障害などと現れる症状は様々です。また、けいれんが起こることもあり、全身性のてんかん発作や、顔や手や足だけの部分けいれんのこともあります。腫瘍が脳下垂体に発生すれば全身的なホルモンの異常が起こり、聴神経に発生すれば耳鳴り難聴が起こります。

検査は

診察によって神経症状を詳しく調べ、CTスキャンMRI脳血管写などの補助診断を行うことによって、腫瘍のある部位、大きさ、形、性状などがわかります。CT、MRI検査は多くの場合造影剤を使用します。ラジオアイソトープによる検査、血液を採取しての一般検査、時にはホルモン検査も必要になります。

治療について

治療は、腫瘍の部位、大きさ、悪性度などによって決められます。多くの場合は手術によって腫瘍を摘出しますが、良性と悪性をあわせ手術をした脳腫瘍の5年生存率は64%です。髄膜腫、脳下垂体腫瘍、神経鞘腫などの良性腫瘍は手術によって摘出できれば手術後の5年生存率は90%以上の効果が得られています。

神経膠腫全体の5年生存率は34%ですが、悪性神経膠腫の治療効果はそれより小さく、その後の放射線治療や化学療法(抗癌剤治療)が大きく影響します。

悪性神経膠腫の治療効果は手術でどれだけ摘出できるかにかかっており、腫瘍全体の90%以上が摘出できなければ、何も取らない時と変わらない事がわかっています。中途半端に取っても意味がないのです。かといって手術後に重大な機能障害(手足の麻痺や言語障害)がでることは出来るだけ避けなければなりませんから、その兼ね合いが大切です。それは、手術中は悪性神経膠腫と正常の脳との区別が肉眼ではつけづらいことや、手や足を動かしたり、言葉を話すための中枢の正確な脳の局在(位置)がはっきりしないことによります。しかし最近では、特殊な蛍光物質を利用して、手術中に腫瘍の部分と正常脳の部分を一目で区別がつけられるようになってきました。また、脳の中で手足などの大切な中枢機能の局在を手術中にすぐに見分けられるように、全身麻酔をかけないで、手術中に患者さんとお話をしたり、自由に手足を動かしてもらい、言語障害や手足の麻痺のない事を確認しながら腫瘍を摘出する事ができます。これらの方法を利用する事によって手術後に重大な機能障害ができることがなく90%以上の腫瘍を摘出できるようになって、悪性神経膠腫の治療成績も良くなってきました。

さらに最近の研究で悪性神経膠腫に対しては光線力学療法温熱療法中性子療法などが期待されています。

腫瘍の種類によってはホルモン療法ガンマーナイフが使われます。

脳腫瘍は、中枢神経からできる腫瘍であり、頭と体の動きや感覚はすべて中枢神経に依存しているので、その症状は極めて多彩です。

嗅覚、視覚、味覚、聴覚、触覚などの五感、判断力、思考力、記憶力などの精神機能、さらに手足の動きに異常を感じた時、特にそれが少しずつ進んでいると思った時には、迷わずに脳神経外科を受診され、検査を受けられることをお勧めします。