当院リハビリテーション科は「患者さんの気持ちに寄り添い、信頼、尊敬の意を込めて、質の高いリハビリテーションを行います」という理念の基に、脳の様々な疾患に対し急性期から維持期までのリハビリテーションを提供しています。
当院は脳血管疾患リハビリテーション料Ⅰの施設基準を取得、主な対象疾患は脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血、脳腫瘍等です。入院では当日または翌日から理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)のチームによる早期リハビリテーションを始めます。急性期の治療後に回復期リハビリテーションが必要な状態の患者さんには、回復期リハビリテーション病棟に転棟していただき、急性期よりシームレスなリハビリテーションを行っています。療法士は、患者さんの状態や状況を共有するために担当病棟毎にチームを作り活動しています。チームリハビリテーションにより機能改善を図り、可能な限り在宅復帰を目指します。また退院後も、リハビリテーション継続が必要な患者さんに外来リハビリも行っており、在宅や地域での暮らしを支えるため、患者さん一人ひとりに合わせたリハビリテーションを提供しています。
理学療法(PT)
理学療法では、身体機能の改善を目標に、起きる、座る、立ち上がるなどの基本的な動作を中心に訓練を進めていきます。歩くことは大きな目標です。様々な訓練、装具や杖などの補助具を提供することができます。訓練開始直後はベッドから離れて生活できる様に、そして徐々に支えがしっかりとした平行棒から歩く訓練をはじめ、院内の平らな環境、そして階段の上がり降りなどの訓練、屋外の歩く訓練を進めて行きます。
2016年6月よりウォークエイドという、きれいに歩くことを期待する神経筋電気刺激装置を導入しています。科学的根拠に基づいたリハビリを提供することにより、つま先が上りにくい場合、電気刺激にて動きを促すことが可能となります。
様々な訓練内容や機器の使用により、安心して一歩踏み込み、そして足元を見ないで顔を上げて歩くこと、きれいな歩行が出来る様になることを目指しています。
作業療法(OT)
作業療法の「作業」とは、日常生活動作、家事、仕事、趣味、対人交流など、人が営む生活行為の全てと、その遂行に必要な心身の活動を示しています。
作業療法では、脳神経外科、脳神経内科の疾患で心身に障がいを受け、病前におこなっていた作業や生活行為が難しくなった方に対し、生活を再構築するために訓練をおこないます。具体的には、身体機能や高次脳機能の状態を確認し、難しくなっている作業や生活行為の問題点を挙げていきます。その問題の解決に向けて、食事や着替え、トイレ動作などの日常生活動作訓練や身体機能および高次脳機能訓練を実施します。加えて、病前の役割などに応じ、家事動作や復職へのアプローチもおこないます。
脳卒中に伴い上肢に運動麻痺をきたした方に対しては、神経リハビリテーションの理論に基づき、ミューロソリューションという電気刺激を用いた治療を導入しており、機能回復に向けた取り組みを積極的におこなっています。
また、退院後に自動車の運転が必要な方に対し、自動車運転再開の支援をおこなっています。具体的には、身体機能、高次脳機能、ドライブシミュレーターを使用した検査、訓練をおこないます。ドライブシミュレーター(Honda セーフティナビ)が、2019年12月に導入され、反応速度や危険予測など自動車運転に必要な、認知、判断、操作などを評価できるようになりました。尚、運転再開の可否は、当院での検査結果を元に運転免許試験場での判断となります。
言語聴覚療法(ST)
言語聴覚療法室では、さまざまな脳損傷の後遺症で、言葉が思い出せない・間違える、言葉が理解できない、呂律が回らないといった症状でコミュニケーションがうまくとれなくなった方に評価や訓練をおこなっています。また、食べ物や水分の飲み込みが難しくなる「摂食・嚥下障害」に対しては、適宜、VF(嚥下造影検査)やVE(嚥下内視鏡検査)をおこない、障害をより正確に把握し訓練を進め、安全に口から食べることが出来る様にサポートしています。
ニューロリハビリ
ニューロリハビリは、ロボット技術などを応用した装置を使うリハビリテーションを積極的に実施しています。
ウェルウォーク Welwalk
歩行の改善、歩行量の確保を期待する歩行練習アシストロボット
歩行練習アシストロボット「ウェルウォーク」は、免荷装置により急性期早期からの歩行訓練量の確保が可能で、動作分析機能による訓練プログラムのサポートが可能です。足の麻痺にて歩行が不自由になった方が、自然な歩行を習得できるようにリハビリテーション初期段階から質・量ともに支援できます。
ミューロソリューション MURO Solution
脳と神経に働きかける低周波治療器
脳卒中の患者さんの上肢不良肢位(手関節屈曲、手指握りこみ)には、医療機器「ミューロソリューション」を使い脳細胞のネットワークを再構築し、麻痺した手を再び動かすことを目指します。
ウォークエイド WalkAide
歩行の改善を期待する神経筋電気刺激装置
歩行神経筋電気刺激装置「ウォークエイド」は、脳卒中などの後遺症で歩行が不自由になった患者さんの急性期・回復期リハビリテーションに有効です。安心して踏み出せる歩行を目指します。
ドライブシミュレーター Driving Simulator
脳卒中や脳疾患を治療した後の運転再開を支援
運転再開の希望を持つ患者さんを対象に、ドライブシミュレーターを用いて、運転に必要な高次脳機能・認知機能の評価を行っています。社会復帰支援と交通事故の未然防止を目指します。
バイタルスティム VitalStim
嚥下の評価ができる低周波治療器
脳卒中などの後遺症で嚥下機能に低下を認めた患者に対して、医療機器「バイタルスティム」を使い、頚部への電気刺激により嚥下筋力の機能向上を図り、安全に食べれることを目指します。
音楽療法室
音楽療法は、音や音楽の持つ身体的、認知的、心理的、生理的働きを活用し、障害を受けた心身機能の改善・維持、生活の質の向上などを目的におこなわれる治療法です。当院では個別・集団音楽療法、また院内コンサートをおこなっています。
個別音楽療法
個別音楽療法は、主に機能回復・維持・心理的サポートなどを目的としています。機能回復・維持では、米国で確立された神経学的音楽療法を元に、通常のリハビリ訓練に加えて、障がいのある運動・言語・認知機能面の強化をおこないます。心理的サポートでは、不安や痛みがある方、気持ちが落ち込む方を対象に、音楽による気分転換やリラクゼーション、また入院中のモチベーションの維持・向上をサポートしています。またベッドから起きられない方、日常的に刺激の少ない方などに対して、聴覚や感覚を刺激する音楽をおこなっています。
集団音楽療法
入院生活中に、少しでも楽しくリラックスできる時間を過ごしていただけるよう、それぞれの病棟で週1回ずつおこなっています。入院患者さんやご家族、ご友人など、どなたでも参加することができます。リクエストによる歌唱や簡単な楽器演奏、また時には患者さんが歌などを披露することもあります。他の方との交流や、自分らしさを表現する機会にもつながります。