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第5回:顧みる

誰がこのような2020年を予想しただろうか。オリンピックイヤーを迎えて多くの人が明るい気持ちで新年を過ごしていた。2019年12月4日にマラソンが札幌で行われることも決まり、オリンピックは北海道の人達にも急に身近なものとなっていた。昨年のラグビーW杯が大成功だったことからオリンピックでも多くの外国人が札幌を訪れ、札幌や北海道が活気づくことを誰も疑わなかった。それがたった2-3ヶ月の間に事態は一変した。道内では国に先立ち法律に基づかない3週間の緊急事態宣言を2月28日に出し、この新型コロナ感染症に対して一定の効果を認めた。しかし4月になり人の動きは活発になり徐々に新規感染者は増加した。東京や大阪の急速な感染者の増加を受けて国は4月7日に緊急事態宣言を発出したが、それによって首都圏から地方への人の動きが加速した。

今(4月17日)北海道は第2波に襲われている。医療機関の緊張度は2月下旬よりもはるかに強い。札幌市内でも院内感染が発生して当該病院は診療の制限を余儀なくされている。当院でも可能な限りの感染予防やクラスター対策を行ってはいるが、救急患者さんが連日搬送される状況では不顕性感染の患者さんの混在は回避できない。当院の患者さんや職員から新規感染者が発生することは覚悟しているが病院の管理者としてはクラスターにはしたくない。例えば手術室でクラスターが発生する。手術室の機能が失われると定期の手術のみならず救急受け入れにも制限が出る。当院が受けるべき救急車の多くは他院へ回るであろうがやがて地域のキャパシティを超えてくる。医療崩壊の始まりである。それにしてもこの感染症の拡大は我々に何を警告しているのだろうと考えてしまう。グローバルな世界を享受してきた我々が世界中に感染を拡げている。ディスポーザブルのマスクやガウンを散々無駄遣いした我々が今度は布のマスクやガウンを探している。当り前だと思っていた教育が当り前に受けられない。

いつか2020年を顧みたときにこの年があったからICTが急速に進化した、家族の在り方が変わった、社会の safety net が充実した、地域産業が再興した、などと思いたい。決して米中戦争のきっかけになったとはしてはならない。

昨日(4月19日)は当院の49回目の開院記念日であった。開院以来最大の困難を職員とともに乗り越え、来年の開院50周年を心から祝いたい。